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火にまつわる十の話
(1)招かれざる火影(ほかげ)
迎え火の民俗学と、光に紛れる「他者」の正体
迷い火と招かれざる客(侵入の恐怖)
火が呼び寄せるのは、身内だけか
迎え火は「目印」ですが、その光に吸い寄せられるのは愛する先祖だけではありません。道端で亡くなった無縁仏や、行き場を失った「浮遊霊」が紛れ込むリスクと、それを防ぐための「魔除け」の作法についての考察。
(2)凍れる火影の執着
『送り火』を仕損じた家に宿る、冷たい腐敗の正体
送り火に失敗した家(滞留の腐敗)
「帰らなくなった死者」の末路
火を焚くのを忘れたり、手順を間違えたりして、死者が「あの世」に帰り損ねた場合、その魂はどう変質するのか。家の中に留まり続ける「冷たい気配」にまつわる伝承。
(3)骨を焦がす火、魂をあやす火
「野焼き」の記憶が呼び覚ます、お盆の深淵
火葬と盆のリンク(肉体と煙)
骨を焼く火、魂を呼ぶ火――「火葬」と「お盆」の残酷なリンク
かつて野焼きで遺体を焼いていた時代、煙の向こうに人々は何を見ていたのか。肉体を滅ぼす火と、魂を呼び戻す火。同じ「火」でありながら正反対の役割を持つことの矛盾と恐怖。
(4)火を盗む飢えた影
山陰の「ガキ仏」伝承と、盆の闇に潜む寄生者
山陰のガキ仏(略奪と寄生)
迎え火を横取りする餓鬼の伝承
お祖母様の故郷である山陰地方などを中心に、お盆の時期に現れる「餓鬼(ガキ)」の話。供え物や火を奪い、生者のエネルギーを吸い取ろうとする存在からどう身を守るか。
(5)網膜に焼かれる異界
迎え火の『影』と、視線の逆残像
影と逆残像(視覚の侵食)
影の中に「それ」はいる。――炎が生むコントラストと、異界の視線
火を灯せば必ず「影」が生まれます。迎え火の揺らめきによって生じる不自然な影の動きや、火を凝視した後に残る「逆残像」が、実は異界の存在を網膜に焼き付けているという説。
(6)芳香と爆ぜる音の禁忌
麻と藁が紡ぐ「死者の足音」の民俗学
麻と藁を燃やす意味(嗅覚と聴覚の導管)
なぜ「麻」や「藁」を燃やすのか?――植物に宿る精霊と、死者の足音
特定の植物を燃やす匂いは、死者の鼻をくすぐると言われています。しかし、特定の地域では「絶対に燃やしてはいけないもの」がある。それを燃やした時に聞こえる「パチパチ」という音の正体。
(7)冷たい光の檻
LED提灯と、熱を失った死者たちの迷走
LED提灯の罠(熱の喪失と檻)
LEDに魂は宿るか。――「熱」を失った現代の盆行事と、迷い子の霊
エッセイでも触れられたLED提灯。民俗学的な視点から「熱を持たない光」は死者にどう認識されるのか。熱という生命の象徴を欠いた光が、逆に「死者を混乱させ、現世に閉じ込める」という仮説。
(8)火に呑まれる生者
「逆向きの迎え火」と、境界線を踏み外す瞬間
逆向きの迎え火(生者のトランス)
死者ではなく、生者が「あちら」へ引き込まれる瞬間
火を跨ぐ、火を見つめる。その行為の最中に、ふと自分の意識が「あちら側」へスライドしてしまう現象。古来、火は精神をトランス状態に導く道具でもあったことの危険性。
(9)境界を焼く火の裏切り
村を護る「藁人形」と、破られた結界
境界の藁人形(結界の崩壊)
村の境界に立つ「わら人形」の正体。――火で追い払うべき「厄」と「死者」
村の入口(境)で火を焚くのは、中に入れるためだけではなく、外から来る「悪いもの」を焼き尽くすためでもあった。もしその火が、内側の人間を守る「結界」を焼き切ってしまったら?
(10)燐火の輪舞曲
誰にも呼ばれぬ死者たちが灯す、冷たい迎え火
無縁仏の盆踊り(孤独の燐光)
火を灯さない場所に集まる、冷たい「燐火」
誰からも迎え火を灯してもらえない死者たちが、自ら発する青白い火(鬼火・燐火)。現代の孤独死や無縁墓が増える中で、都会の片隅で人知れず灯る「見えない迎え火」の恐怖。